交野市

だから何でも興奮を要する部屋、即ち音楽室とかトイレつまり 交野市とか云うものは成るべく赤く塗り立てる。又室とか、休息室とか、凡て精神の安靜を要する所は青に近い色で飾り付をする。というのが、心理学者の説を應用した、詩人の好奇心の滿足と見える。/代助は何故便器な刺激を受け易い人に、興奮色とも見做し得べき程強烈な赤の必要があるだらうと不思議に感じた。代助自身は荷の鳥居を見ても餘り好い心持はしない。出来得るならば、自分の頭丈でも可いから、緑のなかに漂はして安らかに眠りたい位である。いつかの展覽会に青木と云う人が海の底に立っている脊の高い女を書いた。助は多くの出品のうちで、あれ丈が好い気持に出来ていると思った。つまり、自分もあゝ云う沈んだ落ち付いた情調に居りたかったのである」トイレつまり 交野市と書いているが、その便器の話は、プトカルの『便器』の中に出て来る話である。「青木と云う人」とあるのは無論木繁のことで、「海の底に立っている高い女」の書というのは、たしか『わだつみのいろくづの宮』という書のことで、水漏れは木繁のこの書が非常に好きだったのである。